炭酸塩岩の分類
炭酸塩岩の分類に関する研究は1950〜60年代に数多く行なわれてきた.炭酸塩岩は多様な性質・起源を持つ構成物を含む.分類に際して考慮すべき事柄は,化学組成・鉱物組成・骨格粒子の種類・陸源物質の含有量・基質・粒径・孔隙・支持構造・セメント・再結晶など,多岐におよぶため,この時期に提案されてきた分類法は極めて多様である.
 研究の目的に応じて,採用する分類方法を変えることも可能であるが,他の炭酸塩岩の研究と比較する際には分類方法を統一する必要性は大きかった.Folk (1959) はこの時代までの炭酸塩岩の岩石記載学的研究を考慮し,ほぼ出揃った特徴をまとめ、画期的な分類方法を提案した.最も重要な点は,Folk は炭酸塩岩を炭酸塩粒子 (allochemーFolk以降はあまり用いられなくなる)・微晶質基質 (micrite)・スパー質方解石セメント (sparry cement) の三成分のダイヤグラムにプロットすると,基質優勢とセメント優勢の2つの領域(下図の青の領域)に分布が集中することを見いだしたことである.これは,細粒の炭酸塩泥成分の洗い流し (winnowing) の有無を反映したためであると考え,海水のエネルギー指標となりうる分類方法の必要性を主張した.
 海水のエネルギーの低い環境で堆積した炭酸塩岩は一般に,細粒の炭酸塩泥の基質の中に粒子が点在するような組織を持つ.海水のエネルギーが大きくなると,細粒の炭酸塩泥は洗い流され (winnowing),セメントにより埋められる孔隙部が形成される.また,炭酸塩粒子もエネルギー指標として用い,海底での侵食作用によるイントラクラストと高エネルギー下で生成するウーイドを重視している.
 Folk の分類では,まず炭酸塩岩が基質優勢であるか,セメント優勢であるかにより区分し,岩石名の語尾を,それぞれ,micrite と sparite にすることとした(左図).次に,優勢な粒子の種類により,intra-, oo-, bio-(生物遺骸粒子が優勢), pel-(ペロイドが優勢)を語頭に付けることになる.さらに,Folk は粒径やドロマイト成分の含有量を加味して,いくつかの命名法を提案した.
 しかし,Folk の分類は明らかに細分のしすぎであり,同一薄片中に異なる名前の付く部分が見られることなど,問題も多い.また,粒度を全く考慮に入れていないことや,さらにイントラクラストの多くが陸上露出により浸食された石灰岩粒子であることから海水のエネルギーを反映していないという問題点もある.そこで,最近では Folk の分類方法を用いた研究は少なくなっている.
 なお,Folkは礁性石灰岩に対して,biolithiteという言葉を提案した.
 本章で詳しく説明する Dunham (1962) はこれまでのどの分類よりも簡便なものを提案している.彼の提案以降は,この分類を用いて炭酸塩岩の岩相を記載することが普通になっている.

 しかし,1980年代に入ると,炭酸塩岩の多くに微生物による構造・組成が含まれていることが認識されはじめた.これらの要素は,Dunham の分類には加味されていない.そこで,Burne & Moore (1987) は微生物が関与して生成した岩石(多くは炭酸塩岩)に対してマイクロバイアライトという言葉を用いることを提案している.

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