Carboniferous~Permian
石炭〜ペルム系
石炭〜ペルム系の石灰岩は日本列島に多数分布しており様々なタイプがある.南部北上山地に分布する石灰岩は陸棚相のものであり,砂岩や泥岩を伴い,石炭系の鬼丸層や長岩層,下部ペルム系の坂本沢層などいくつかの層準に発達する.これに対して,西南日本には,海山上で堆積したタイプが分布している.内帯の秋吉帯には石炭〜ペルム系の礁性石灰岩体が発達し,美濃帯にはペルム系(一部三畳系)の岩体が見られる.また,石炭〜ペルム系の石灰岩は西南日本外帯の秩父帯にも発達している.
 これら多数の石灰岩のうち,本項では,特に有名な,山口県秋吉台(石炭〜ペルム系)と宮城県岩井崎(下部ペルム系)について掲載する.
秋吉台の石灰岩を含む地層は,西南日本内帯のペルム紀付加体である「秋吉帯」に属する.秋吉帯には,秋吉台と同じ特徴を持った石炭〜ペルム系の石灰岩が,新潟県青海・岡山県阿哲台・広島県帝釈峡・福岡県平尾台などに分布している.
 秋吉帯の構成岩石は,陸源砕屑岩相と海洋成岩相に区分され,両者はまったく異なる環境で発達したと考えられている.陸源砕屑岩相は海溝を埋めた砂岩・泥岩を主体としているのに対し,海洋相は玄武岩溶岩・火山砕屑物・チャート・石灰岩からなる.両者は海洋プレート上にあった海山が大陸に衝突した際に,混然一体となったと考えられている (Sano and Kanmera, 1988).
秋吉帯の石灰岩地域のうち,最も研究が進んでいるのが秋吉台である.秋吉台は山口県西部に位置し,16 x 7 kmの広さを持つ日本有数のカルスト地域でもある.
 石灰岩は不純物に乏しく,基底部に玄武岩を伴い,周囲の砂岩・泥岩とは明瞭な境界で接している.これらの特徴は秋吉台の石灰岩が海洋プレート上の海山で堆積し,後に大陸プレートに付加した事に由来する (Sano and Kanmera, 1991a).また,石灰岩体に見られる,破断による角礫や泥の注入組織は,海山の衝突を裏付けるものと考えられている (Sano and Kanmera, 1991b,c,d).
 
秋吉台の石灰岩類は秋吉石灰岩層群と呼ばれ,玄武岩の部分を含めると総厚は1,000m程度と見積もられる.石灰岩は保存の良い初期石炭紀 (middle Tournasian) から中期ペルム紀 (Midian) までの海生化石を多産する.本層群の化石年代を最初に検討した小澤儀明 (1932) は紡錘虫による化石帯を提唱し,秋吉台の石灰岩体が逆転層であることを示した.生層序学的研究は,その後も続けられ,Ozawa and Kobayashi (1990) は,47の小型有孔虫化石帯と42の紡錘虫化石帯を提唱している.

本項では,以下に示す様に,山口県秋吉台での,1) 露頭,2) 鏡下での堆積/続成構造,3) 砕屑性の岩相,4) 礁性の岩相,5) 化石について掲載した後で,6) 宮城県岩井崎の下部ペルム系石灰岩について解説する.

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