Organic reef
生物礁
生物礁は,炭酸塩骨格を分泌する固着性生物により,浅海域で作られた構造である.現在,亜熱帯から浅海域に発達しているサンゴ礁のように,生物礁では,生物群集の多様度と,堆積物の生産性が高いという特徴がある.炭酸塩堆積物の生産速度は,サンゴやサンゴモの種ごとに見積られており,1.5-4.5 kg CaCO3/m2 年 程度である.これを堆積速度に読み替えると,0.5-1.5 m/千年に達する.また,現在のサンゴ礁では最大で6m/千年という堆積速度も記録されている (Longman 1981).
定義と用語:生物礁は,かつて,Lowenstam (1950) により,(1) 波浪に対する抵抗力と,(2) 堆積物を捕捉する能力を兼ね備えた枠組み構造 (framework) を持つもの,と定義された.しかし,この定義を過去の堆積物に対して適用した場合,波浪に対する抵抗力の認定が困難であるという問題が生じる.Lowenstam の定義は,「狭義の生物礁」として用いられることがあるが,近年では,よりゆるやかな定義が用いられている.例えば,Riding (2002) によれば,生物礁は「固着性生物により生息場で作られた石灰質堆積物」と定義している.
 また,生物礁に関連した構造を記載する用語は多数提案されていた.多くは堆積体の形態に基づいたものであり,現在でも良く用いられる言葉を右表に示す.
サンゴ礁複合体:サンゴ礁では,波浪が最も強く,水深が浅い礁嶺 (reef crest) と呼ばれる場所で,最もサンゴの成長が活発になり,強固な枠組み構造が形成される.そこから陸側には,比較的水深が小さく,水のエネルギーが弱い場所がある.ここは,その水深や幅により,礁湖 (lagoon),礁地 (moat),礁原 (reef flat) と呼ばれる.一方,礁嶺から海側は,比較的大きな傾斜を持つ礁斜面 (reef slope) になっている.以上を礁複合体 (reef complex) と呼ぶ.下図に,琉球列島における礁複合体の断面を示す.礁複合体の各場所では,その環境に対応して,生息する群集が異なっている.特に,造礁サンゴは水深に対して敏感であり,化石サンゴ群集は古水深の良い指標になる (Nakamori, 1986; Sagawa et al., 2001).
地質時代の生物礁:顕生代を通じた生物の進化と絶滅を反映して,1) 造礁生物群集の構成生物グループと,2) 生物礁の発達程度,は一様ではないことが知られている (Fagerstrom, 1987).この傾向をいち早く示した Copper (1988) は顕生代を通じて5回の期間に生物礁が栄えたとした.それらは,a) カンブリア紀の古盃類礁,b) デボン紀の層孔虫-四射サンゴ礁,c) ジュラ紀後期〜白亜紀最前期の六射サンゴ-層孔虫礁,d) 白亜紀後期の厚歯二枚貝礁,e) 新第三紀〜現在のサンゴ礁である.逆に,大量絶滅後の前期石炭紀や前期三畳紀には,造礁生物群集が進化しきれておらず,生物礁はあまり発達しなかったとされた.その後,統計的な検討が進められ,Kiessling (2002) は単位期間辺りの生物礁の報告例を数値で示した.それによると,デボン紀後期 (Givetian〜Frasnian),ジュラ紀後期 (Oxfordian〜Tithonian),中新世中期の3つの期間に,生物礁発達のピークが示されている.
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Authers
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