Supratidal-intertidal
極浅海環境
潮上帯〜潮間帯の極浅海における炭酸塩堆積場のうち,ここでは,特徴的な堆積プロセスが見られるサブカとビーチに絞って解説する.
 乾燥気候下で発達し,極めて平坦な地形を持つ炭酸塩プラットホームの上部潮間帯から陸側には,サブカと呼ばれる広い潮上帯がある.最も大規模なペルシャ湾でのサブカは幅10kmに達し,海側への傾斜は1/2500程度である.サブカは,波浪時に冠水し,その際に,大量の炭酸塩砕屑物が運搬される.その後,通常の乾燥した状態に戻ると,堆積物にはティーピー構造や多角形の乾裂痕が発達し,間隙水からは石膏・硬石膏・ドロマイト(相沢ほか, 1991)など,一般の海水環境では生じない鉱物が沈澱する.ペルシャ湾における蒸発作用は極めて強く(1,500mm/年),鉱物の沈殿は連続的に起こり,蒸発による孔隙水の組成変化の影響は潮間帯にもおよぶ.上部潮間帯では,ドロマイトの沈澱も起っており,初生的堆積物は交代される.また,ここではシアノバクテリアによる微生物マットも発達する (Park, 1976, 1977).一方,より陸側の潮上帯では冠水の頻度は低く,石膏が優勢な鉱物相になっている.
 ビーチは炭酸塩の沈澱にとって理想的な場所であり,ビーチの砂礫が固結したものはビーチロックと呼ばれる (Ginsburg, 1953).砂礫は高エネルギーの波や潮流で運搬されるため,粒度が大きく,孔隙に富む.この透水性の良い砂礫には孔隙水が大量に流れ込み,上部潮下帯から潮下帯でアラレ石もしくはMg方解石によるセメント形成が起る (Alexandersson, 1972; Moore, 1989).なお,孔隙水は蒸発作用や淡水の混入により,炭酸カルシウムに対する過飽和度が高くなると考えられている (Magaritz et al., 1979).一般に,ビーチロックは,厚さ数m以下であり,海岸線に平行な層状〜ノジュール状に発達する.また,海側に傾斜した層理面を有する事もある.ビーチロックの発達は亜熱帯〜熱帯地域の海岸に多く認められ,乾燥・湿潤の気候条件を問わない.また,地中海 (Alexandersson, 1972; Holail and Rashed, 1992) や熊本県天草(寺田・松田, 2001)の様な比較的温暖な温帯地域でも発達している.
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Authers
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