SFC(Ver.6.34)の使用法について (EBSD編)
03.07.20
TK
1. ファイルの構成,インストール
1−1.概要
1−2.インストールの方法
1−3.ファイルの構成
2.プログラムの起動
3.結晶データ等の入力
3−1.フォームの説明
3−2.結晶データの入力方法
4.菊地(EBSD)パターンの計算
4−1.フォームの説明
4−2.基本的な菊池パターンの計算法
5.測定された菊地(EBSD)パターンの解析
5−1.フォームの説明
5−2.菊池パターンの解析手順
5−3.菊池パターンの候補が無い場合に考えられる問題
6.カメラパラメータの設定方法
6−1.パラメータの種類
6−2.Acquisition angle, X-shift, Y-shiftの決定方法
6−6.カメラパラメータの保存,読み込み方法
1.ファイルの構成,インストール
1−1.概要
本プログラムはSFC6と言うEXE形式の実行ファイルと様々なデータファイルにより構成されている。またCORRECTOR.EXEという実行ファイルがあるが,これはセミインレンズ型のSEMを用いるときにパターンの歪みを補正するためのパラメータを決定するもので,一般的でないので本マニュアルではその使い方を省略した。これらのファイルはすべてSFCというフォルダに納め,ハードディスク上に置く。
1−2.インストールの方法
SFCを各自のパソコンにインストールするのは,
C:\My
Documents
というフォルダ(無ければ作成すること)にSFCのフォルダをコピーする(このMy Documentsは最近のWindowsシステムにあるDocuments and Settingsの下にあるものとは異なるので注意)。またプログラムではデフォールトとして
C:\My
Documents\SFCdata
と言うフォルダに結晶データを探しに行くので,これもできれば作成しておくこと。
SFC6.EXEを一般的なWindowsシステム上で起動するには,このSFCフォルダの配置とともに,Visual Basic 6.0の基本ライブラリーといくつかのActive-Xコントロールをパソコンにインストールする。これは例えば,
http://www.vector.co.jp/soft/win95/util/se063979.html
よりダウンロード/インストールできる。
1−3.ファイルの構成
SFCのフォルダの中には以下のファイルあるいはフォルダが納められている。
SFC(Ver6.34)のプログラムの本体。これをクリックすればプログラムは起動する。
・ASF(フォルダ)
原子散乱因子のテーブルが入っている。中には電子散乱用のテーブル(ASF-E.csv)とX線散乱用(ASF-X.csv)とあるが,Ver6.0以降電子散乱因子もX線散乱因子から計算するようになったためASF-E.csvは実際に使われない(削除しても構わない)。
・SpaceGr(フォルダ)
このフォルダ内には各空間群の対称操作が納められている。001.dat〜230.datまではInternational Tablesの標準表記に対応したものが入っているが,231.dat〜250.datはユーザーが同様なフォーマットで作成すれば変則的な空間群(I1,P21/nなど)も本プログラムで扱うことができる。
検出器とプローブとの相対位置などを示すパラメータ(カメラパラメータ)が格納されている。CSVのテキスト形式。
・Corrector_Standard
セミインレンズ型SEMにおけるパターンの歪みの補正に用いられるパラメータが格納されている。この補正を使わないユーザーは関係ない。
・その他マニュアル関連のWordファイル
2.プログラムの起動
Fig.1
SFC6.EXEをダブルクリックして本プログラムを起動する。上のようなMAIN MENUのフォームが現れる。
@.結晶データ入力用フォームと呼ぶ基本的なフォームを表示させるボタンで,
・
新しい結晶データの入力・保存
・
結晶データの読み込み・編集
・
EBSD以外の様々なアプリケーション(粉末X線回折パターン,単結晶パターン,電子回折デバイシェラーリング,電子回折繊維図形)の実行
などを行うときにクリックする。
A.菊地(EBSD)パターンのシミュレーション等を行う場合にクリックし,計算パターン表示用のフォームを表示する。
B.測定された菊地(EBSD)パターンを解析するためのフォームを表示する。
C.プログラムを終了する(なるべくフォーム右上の×よりもこのボタンで終了させる)。
D.Camera Parameters
カメラパラメータの設定,保存及び読み出し(4.カメラパラメータの設定法参照)。
E.Utility
いくつかの簡単な結晶学的計算ルーティンが含まれるフォームを表示する。バージョンによって大きく変わる可能性もあり,特殊な用途のものもあるのでここでの説明は省略する。
Fig.1
3.結晶データ等の入力(結晶データ入力用フォーム)
3−1.フォームの説明
Fig.2
@.Crystal Data:結晶データの保存,読み出しあるいはCIFフォーマット等からのインポート,プログラムの終了を行う。
SAVE − 入力した結晶データを指定したファイルに保存する。
LOAD − ファイルから結晶データを読み込む。
Import from icsd.txt − ICSDのテキストフォーマットからのインポート。
Import from CIF − CIFフォーマットからのインポート
END − SFC6の終了。
A.OPTION:特殊用途のため説明省略。
B.Utility:MAIN MENUにおけるものと同じ。いくつかの簡単な結晶学的計算ルーティンが含まれるフォームを表示する。バージョンによって大きく変わる可能性もあり,特殊な用途のものもあるので説明は省略する。
C.格子定数を入力する(単位はÅ,晶系の対称が高い場合は空間群を先に入れれば,対称より明らかな値は自動入力される)。下段に逆格子定数を計算して表示する。
D.空間群番号を入力する。Eのリストボックス中の空間群をクリックしてもここにその空間群番号が入る。
E.空間群番号が入ったリストボックスで,目的の空間群をクリックすればDのテキストボックスに空間群番号が入る。
F.斜方晶系等で軸変換が必要な場合,ここで6種類の軸変換記号を選ぶ。必要のないときは”abc”で良い。
G.原子座標等を入力するときにこのボタンをクリックすると原子座標入力用のフォームが現れる(入力方法は後述)。
H.JCPDS(ICDD)等の反射を入力するときにこのボタンをクリックすると反射入力用のフォームが現れる(入力方法は後述)。
I.原子座標入力後,その入力用フォーム(後述)のOKボタンをクリックするとここに単位格子内の原子座標が計算されて出力される。出力されるのは,
通し番号,原子ラベル名,元素名,占有率,X, Y, Z,等方性温度因子
となっている。
*空間群等の再入力だけでは単位格子内原子座標の再計算(Iのリストボックス)は行われず,必ず原子座標入力フォームのOKボタンをクリックする必要がある。
J.単位格子内の原子座標をファイルやプリンターに出力したいときにクリックする。ファイル出力はCSVテキスト形式となる。
K.独立な原子を中心とした原子間距離を計算する。クリックすると新しいフォームが出てくるので,最大原子間距離をテキストボックスに入れCalcをクリックする。主に原子座標入力や対称操作に誤りがなく単位格子内の原子が正しく計算できたかをチェックするため用いる。
L.計算する反射(結晶構造因子)のd値の最小値を入力する(不必要に小さな値は入れないこと)。
M.X線か電子かを選択する。
N.計算するh,k,lにマイナスを計算するときはチェックする(EBSDやXRDなどの通常の計算では必ずチェックすること)。
O.このテキストボックスに数値を代入すると,その指数はその値のみとなる。例えばhk0の反射のみを計算したいときには,lのところに0を入れる。
P.使用するX線あるいは電子の波長をÅ単位で入力する。
Q.このボックスで代表的なX線源あるいは電子の加速電圧を選べば,自動的にM,Pの値が入力される。
R.結晶構造因子の計算を実行する。
S.このリストボックスに結晶構造因子の計算結果がd値の大きいものからされて出力される。
Ⓐ.リストボックス内の結果をファイル出力あるいはプリントアウトしたいときにクリックする。
Ⓑ.粉末XRDを計算する(本マニュアルでは省略)。
Ⓒ.電子回折デバイシェラーリングを計算する(本マニュアルでは省略)。
Ⓓ.単結晶回折パターンを計算する(本マニュアルでは省略)。
Ⓔ.菊地パターンを計算する(後述)。
Ⓕ.EBSD等の菊地パターンの解析(3つのバンドの位置による計算)(後述)
Ⓖ.EBSD等の菊地パターンの解析(3つのバンドの位置とバンド幅による計算,本マニュアルでは省略)。
Ⓗ.繊維図形(配向試料)の電子回折パターンを計算する(本マニュアルでは省略)。
3−2.結晶データ入力方法
3−2−1.基本的な手順
1)Dに空間群No.を入力するか,Eのリストボックス内にある目的の空間群をクリックするかにより空間群を選択する(3−2−4a参照)。
2)必要であればFの軸変換コードを選択する(3−2−4b参照)。
3)Cの格子定数(a,b,c,a,b,g)を入力する。もしすでに空間群番号(D)が入力されていれば,空間群より自明な値はaを入力後自動的に代入される。
4)Gをクリックし,原子座標入力用フォーム(Fig.3)に原子座標を入力(3−2−4c参照)するか,Hをクリックして回折強度入力用フォームにJCPDS(ISDD)カードにある指数(h,k,l)と相対強度を入力する(どちらにするかは3−2−2参照)。入力が終了したらこれらの入力用フォームの下段にあるOKのボタンをクリックする。
5)原子座標を入力したときは3−2−4dの方法で正しく入力されているかを確認する。
6)問題が無ければ@のSAVEでファイル名を入力して結晶データを保存する。
7)Lで回折強度を計算するd値の最大値,MでX線/電子,P,Qで波長(加速電圧)を設定し,RのCalcボタンをクリックすると回折強度が計算され,Sのリストボックスに出力される。
8)Ⓑ 〜 Ⓗの様々なアプリケーションをクリックして次の作業に進む。
3−2−2.回折強度計算のための二種類のデータ入力方法について
本プログラムではEBSD解析のための結晶データの入力として2種類の方法が用意されている。格子定数、空間群の入力は共通であるが、
1)単位胞内の独立な原子座標の入力(G)® 回折強度(結晶構造因子)の計算
2)PDF(Powder Diffraction File)に載っている回折強度と指数の入力(H)
のどちらかを選んでデータを入力する。
1)の方法は正確な菊地パターンの強度計算ができるが、原子座標(結晶構造解析の結果)の情報を何らかのデータベースより探してこなくてはならない。また斜方晶系における軸の取り方や原点の移動等いくつかの注意事項があり、若干の結晶学の知識が必要となる。
2)の方法はJCPDS(ICDD)カード(あるいはそのCD-ROM版であるPDF-2)さえあれば入力は可能であるが、ひとつのd値に2つ以上の指数が示されていたり,d値の範囲が限られているため、菊池パターンの強度分布はある程度不正確となる。JCPDSカードはあるが,原子座標がわからないという場合は仕方が無いが、できれば1)の原子座標入力を試みてほしい。尚2)の入力法でも格子定数,空間群の入力は必要である。空間群の入力は空間群そのものを使うわけではなく,その番号より結晶のLaue群を判別する(Laue群はピークの指数を3次元的に拡張するために必要)。空間群番号とLaue群の対応は以下のようになる。
SG No. Laue
Group Crystal
System
1 - 2 `1 triclinic
3 – 15 2/m monoclinic
16 – 74 mmm orthorhombic
75 – 88 4/m tetragonal
89 – 142 4/mmm tetragonal
143 – 148 `3 trigonal
149 – 167 `3m trigonal
168 – 176
6/m hexagonal
177 – 194
6/mmm hexagonal
195 – 206
m3 cubic
207 – 230
m3m cubic
3−2−3.原子座標の情報
結晶原子座標,特に無機結晶や鉱物のデータベースとしては例えば以下のようなものが利用可能である。
1)ICSD(Inorganic
Crystal Structure Database)
無機結晶について最も多く(> 62,000)の構造解析結果を集めた有料データベース。CIFフォーマットでの出力が可能。
2)MINCRYST
http://database.iem.ac.ru/mincryst/index.php
ロシアのグループが公開している鉱物の結晶構造に関する公開データベースで、2500近い鉱物をカバーしている。
3)American Mineralogist Crystal Structure Database (AMCSD)
http://www.geo.arizona.edu/AMS/amcsd.php
American
Mineralogist, Canadian Mineralogist, European Journal of Mineralogyに掲載された鉱物の構造解析結果を公開データベースとしているもので、数としてはMINCRYSTよりも少ない(〜1000)。CIFフォーマットでの出力が可能。
3−2−4.結晶データ入力におけるいくつかの注意事項
a. 空間群No.の入力
空間群No.の入力は上記2つの方法(GあるいはH)とも必須である。しかしながらGの原子座標入力では各空間群の対称操作ファイル(SpaceGr)より対称操作を読み込み、単位格子内の原子座標を計算するのに対して、Hの回折強度・指数入力では空間群よりそのそのラウエ群を判別し,等価な指数の計算を行う。また空間群を最初に入力することにより結晶系が判別され、格子定数も必要な値のみを入力すれば他の値は自動的に入力される(例えば立方晶系ならばaだけ入力すればよい)。よって格子定数よりも先に空間群No.を入れたほうが効率的である。
b. 斜方晶系等における軸変換コードの入力(F)
1)の原子座標入力の場合で、特に斜方晶系(ときには単斜晶系のいわゆる1st settingの場合もある)のときは軸の取り方により、SpaceGrに納められた対称操作が対応しない場合がしばしば起こる。斜方晶系の場合は必ず結晶データに記載されている空間群表記(Herman-Mauganの記号)とプログラムで表示される記号(E、International Tablesの標準表記)を比較し、軸変換のコードを選択すること。軸変換コードの選択に自信がないときは、以下の文献の表を参照する。
Bertaut,
E. F. (1983): Synoptic tables of space-group symbols. Group-subgroup relations.
In International Tables for X-ray Crystallography / Vol. A, T. Hahn
(Ed.) D. Reidel Publishing, Dordrecht/Boston, p49-68.
2)の回折強度・指数入力では軸変換コードは使われないので問題ない。
Fig.3
c. 原子座標の入力
GのボタンをクリックするとFig.3のような原子座標入力用のフォームが現れる。原子座標は左よりサイト名、元素名、占有率(Occupancy)、x、y、z、等方性温度因子(Biso)を入力するようになっている。
・
サイト名は適当でよい。
・
元素名は元素記号を入力する。もちろんOHなど分子の化学記号は入れてはいけない。OHはO(酸素)として入力する。大文字/小文字は区別する。価数の入力は避ける。
・
占有率はもしデータベースに表記がなければ1であるので、1を入れる。
・
x、y、zはもしデータベースに分数表示されていれば小数に直して、少なくとも小数第4桁まで入れること(1/3® 0.3333, 2/3 ® 0.6667)
・
温度因子はあまり関係ないので無視しても構わない。例えばデータベースにこの値が無かったり、非等方性温度因子が書かれているときは入れる必要はない。
・
この入力に使うグリッドはEXCELと違い数字の最後にEnterを押さないとセルに入力されないので注意すること。
・
ICSDなどから保存したテキストファイル(icsdフォーマット)あるいはCIFフォーマットをインポート機能(図1のフォームにおけるメニューバーのCrsytal Data@の下にある)で取り込めば、空間群No.、格子定数、原子座標はすべて自動的に入力される。
d. 空間群、軸変換コード、原子座標等が正しく入力されたことの確認
これらの結晶パラメータが正しく入力され、単位胞内の原子が計算されたかを確認することは、非常に重要なことである。もしこれが間違っていると菊池パターンの解析あるいはその他の計算が失敗することは言うまでもない。本プログラムでは以下の3つの方法によりチェックすることができる(できれば3つすべてをチェックすることを推奨する)。
1)
単位胞内の原子数(図2のKの上)
ここに計算された単位胞内の原子数が表示される。ここでカッコの中は固溶体で同じサイトに2つ以上の原子を置いた場合におけるの真の単位胞内の原子数である。この値が化学式内の原子数とZ(単位胞内の化学式の数、JCPDSカードを始めほとんどすべての結晶データベースに載っている)の積に一致しなくてはならない。
2)
結合距離(図2のK)
このボタンをクリックし、計算すべき最大の原子間距離を入力すれば、その距離内での各サイト(独立な原子)の周囲の原子間距離が表示されるので、結晶化学的に原子間距離や配位数が正しいかどうか調べる。
3)
粉末X線回折パターンのシミュレーション
手元にJCPDS(ICDD)カードがあれば、例えば波長をX線のCuKaにして粉末X線回折パターンを計算してみる。これで主要なピーク強度がJCPDSカードと一致していることを確認する(あまり厳密な一致は必要なく、入力が正しくても2〜3割程度食い違う可能性は十分ある)。
e.その他
・ 対称性の高い一部の空間群では対称操作の原点の位置が数種類あり、これにより特殊位置(対称要素上の位置)の座標が異なる。入力された座標がこの原点を元にしていないと正しく単位胞内原子が計算されず,上記のチェック項目で不一致が生じる。この場合はFig. 3の原子座標入力フォームの下段にあるテキストボックス(origin shift)に原点の移動量の座標を入力するこれらの値は一度だけ入力すればよい。またデータファイルにはこれらの値は保存されない。
・ ある結晶によっては変則的な空間群(C`1,P21/nなど)を採用しているものがある。このような空間群の場合は231-250の番号でSpaceGrのフォルダの中に登録する(詳細は省略)。
4.菊地(EBSD)パターンの計算
4−1.フォームの説明
4−1−1.菊地パターン表示フォーム
Fig.4
@. Lのピクチャーボックスに表示されたパターンをBMP画像ファイルとして保存する。
A.以下のパラメータの設定を行なう。
Rotation angle pitch − Ⓒで行なうパターンの面内回転の1クリックでの回転角(degree)を指定する。
Shift angle pitch − Kで行なうパターンの上下左右方向への移動の角度(degree)を指定する。
Zoom pitch − Ⓑで行なうパターンの拡大/縮小の比を指定する。
Image size − Lのピクチャーボックスの大きさを指定する。
B.測定された菊池パターンをLのピクチャーボックスの背景に置くかどうかを指定する。
Superpose − 解析中の菊池パターンを背景に置く。
Clear − 背景に置いた菊地パターンを消去する。
C.パターン上にグリッドを表示する(主に測定されたパターンとの比較のため)。
D.現在のパターンにおけるパターンセンタの晶帯軸(u,v,w)を表示する。またこのボックスに晶帯軸の値を入力し,NのCalcボタンをクリックすることによりその方向のパターンを計算する。
E.回折強度に比例して256の階調で描かれる菊地バンドのうち,描くべき最も薄い階調を入力する。未入力ならばすべての階調の菊地バンドを描く。
F.回折強度の強い順から何番目(等価なものを含む)までの菊池バンドまで描くかを指定する。
G.全菊地バンドの線の濃さ(階調)の増減を行なう。
H.これらのチェックボックスをチェックすることにより以下の機能をもつ(すべてNなどのボタンをクリックすることにより機能する)。
Grid − パタ−ン描画時にパターン上にグリッドを表示する(Cと同じ機能)。
Intensity Fix − パターン描画時に回折強度−階調の自動調整をしない。
Zone Axis Map − パターン描画時に結晶方位表示フォーム(後述)を表示する。
Center Position − パターンセンタ(プローブから検出器蛍光板への法線)を青い丸でパターン上に表示する。
Normal Position − 試料を乗せた基板やホルダーの法線方向を青い丸でパターン上に表示する。
Express as Line − 菊地バンドをバンドではなく線として描画する。
I.入力した角度に対応した円を,パターンセンタを中心に描く。
J.回折強度と菊地バンドの階調の対応を選択する。
I − 運動学的回折強度に比例する。
Sqr(I) − 運動学的回折強度の√(平方根)に比例する。
この下のテキストボックスに数字を入力し,その数をnとすれば階調は運動学的回折強度のn乗に比例する(0ならばすべての菊池バンドが同じ階調(255)で描かれる)。
K.パターンを上下左右に移動させる(結晶を回転させる)。
L.パターン内の任意の位置をクリックすると,その位置の晶帯軸(u,v,w)とそれに垂直な面指数(h,k,l)をⒶのテキストボックスに,また極座標(f,q)をSのテキストボックスに表示する。またダブルクリックすると,その方向をパターンセンタとして再描画する。
M.このリストボックスに描画されたすべて菊地バンドの指数(h,k,l)と結晶面の法線の極座標(f,q),強度(階調)が表示される。またこの中の任意の行をクリックすると対応する菊地バンドが赤で描かれる。
N.このボタンをクリックすることによりパターンの描画を行なう。
O.登録されている結晶データを選択する。
P.加速電圧を入力する。
Q.R.このテキストボックスに指数(h,k,l)を入力し,Rのボタンをクリックすれば対応する菊地バンドを赤で描画する。
S.このテキストボックスに極座標(degree)を入力し,右のボタンをクリックすれば,その位置をパターン内に赤い丸で描く。また左のボタンをクリックすればその極座標をパターンセンタにして再描画する。
Ⓐ.パターン上の任意の位置をクリックしたときにここにその晶帯軸(u,v,w)とそれに垂直な結晶面の指数(h,k,l)を表示する。
Ⓑ.パターンの拡大/縮小。
Ⓒ.パターンの面内回転(CW:時計方向,ACW:反時計方向)。また右端をクリックすると回転角が5倍で,また左端では1/5倍で回転させる。
Ⓓ.パターンの表示範囲(areaあるいはAcquisition angle, パターンの中心から上下左右の辺までの角度),パターンセンタの位置(パターンの中心からの水平方向の角度(X-shift)及び垂直方向の角度(Y-shift))を入力する。
4−1−2.結晶方位表示フォーム
Fig.5
@.結晶方位図をBMP画像ファイルとして保存する。
A.チェックすると紙面奥側(反対側)への晶帯軸も表示する(緑の丸で表示する)。
B.チェックすると晶帯軸の位置をcos(q)ではなくqで表示する。
C.チェックすると菊地パターン表示フォーム上の描画パターンに晶帯軸の指数を表示する。
D.方位図に表示する晶帯軸の最大の数値を各uvwについて入力する。
E.極の方向を選択する。
Detector
normal − 検出器(蛍光板)の法線方向
Substrate
normal − 試料を乗せた基板あるいはホルダーの法線方向
F.主要な晶帯軸の極座標を表示する。尚この極座標の円周角(phi)は右を基点とした反時計方向,仰角(theta)は水平面を基点として極が90°となっている。
G,H,I.このテキストボックスに特定の晶帯軸(u,v,w)を入れれば,その極座標をHに出力する。またIのボタンをクリックするとその位置(方向)を方位図に赤丸でプロットする。
4−2.基本的な菊地パターンの計算法
本フォームはMEIN MENUフォーム(Fig. 1)のBのボタンあるいは結晶データ入力フォーム(Fig. 2)のⒺのボタンをクリックすることで表示される。また後述の菊池パターン解析フォームにおいて結晶方位の候補を示すリストボックス中(Fig.6の20)をクリックしても候補の方位に対応した菊池パターンを描画して表示される。菊地パターンを描画するための簡単な流れを以下に説明する。
1)N,Oで結晶データ及び加速電圧を設定する(但し結晶データ入力フォームですでに結晶データ及び加速電圧あるいは波長が設定されている場合は,本フォームの表示時点ですでに設定済みになっている。またここで設定を行なう,と結晶データ入力フォームにもそれらのデータが設定される。
2)必要ならばⒹのカメラパラメータを設定する。本フォームをMEIN MENUあるいは結晶データ入力フォームから表示させたときは,Acquisition Angle(area)のみにファイルに保存された値が代入されている。また菊池パターン解析フォームから候補(Fig.6の20)を表示するときはすべてのに菊池パターン解析フォームと同じ値がすでに代入されている。
3)Dの晶帯軸(u,v,w)に値を入力し,NのCalcボタンをクリックすればパターンが表示される。
4)結晶方位表示フォームを表示するためにはHのZone Axis Mapのチェックボックスをチェックして,再びNのCalcボタンをクリックする。
5)フォーム上の様々な機能を使って目的に合ったパターンを描く(これらの機能のあるものはNのCalcボタンをクリックしないと機能しないものと,その必要がないものもある)。
5.測定された菊地(EBSD)パターンの解析
5−1.フォームの説明
Fig.6
@.測定された菊池(EBSD)パターンの読み込みや保存を行なう。
LOAD
− 菊地パターンの読み込み
SAVE
− 菊地パターンの保存(歪み補正などを行なったパターンの保存などに有用)
CLEAR
− パターンのクリア
A.セミインレンズSEMにおける歪み補正のためのパラメータファイルの指定などを行なう(詳細省略)。
B.カメラパラメータ設定モードのON/OFF(6の“カメラパラメータの設定方法”を参照)。
C.ファイルに登録されている結晶データを選択する。
D.測定時に用いた加速電圧を入力する。
E.読み込んだパターンにセミインレンズSEM等における歪み補正を行なう。
F.解析のためにパターン上に描いた3本の直線の再描画を行なう(これらの直線は他のフォームの下になると消えてしまうため)。
G.パターン上に描いた直線及びそれから取り込まれた座標データをクリアする。
H.パターン上にグリッドを描く(GのClearボタンでクリアできる)。
I.パターン上に描いた3本の直線より結晶方位の候補を計算し,結果をSのリストボックスに表示する。
J.結晶方位の計算に用いる菊地バンドの数(最も強い回折強度から選ばれる)を指定する。ただしその数が同価なバンドの間に入るときは,この数はこれら同価のバンドを含めた数に自動的に再設定され,その数がボックスの上に表示される(この数の三乗で計算量が増えるので例えば100以上の数字は避けること)。
K.結晶方位の計算に用いる菊地バンドを同定するための3つのバンド間の角度の許容誤差(degree)を入力する。
L,M,N.カメラパラメータのArea(Acquisition Angle),X−shift,Y-shiftが表示される。また必要ならば適当な値をこのボックスに入力する。
O,P,Q.カメラパラメータにおける検出器のサイズ(detector area)と上記のパラメータより,検出器からプローブまでの距離(Detector position),検出器上でのX-shift,Y-shiftに対応する長さ(mm)を表示する。またそれらを入力する(Enterが必要)ことにより,L,M,Nのパラメータを計算する。
R.測定された菊池パターンが表示された状態で,3本の強い菊地バンドの中心線をなぞることにより,結晶方位計算のための座標データが入力される(後述)。
S.IのCalcボタンをクリックすることにより結晶方位の候補が出力される。出力される数値は,
1番目のバンドの指数 (h,k,l)
2番目のバンドの指数(h,k,l)
3番目のバンドの指数(h,k,l)
結晶方位(u,v,w)の計算値
1番目のバンドと2番目のバンドの間の角度の計算値と測定値の差(degree)
2番目のバンドと3番目のバンドの間の角度の計算値と測定値の差(degree)
3番目のバンドと1番目のバンドの間の角度の計算値と測定値の差(degree)
の順に出力される。
また”Matrix Error”と最後に表示された候補は結晶方位が正しく計算されていないことを示す。
これらの候補のひとつをクリックすると,上で述べた菊池パターン表示フォームが現れ,その方位からの計算パターンが描かれる。
5−2.菊地パターンの解析手順
1)@のメニューより解析したい菊地(EBSD)パターンを読み込む。
2)セミインレンズSEM等でパターンに歪みがある場合はEのボタンをクリックして歪みを補正する。
3)Cをクリックして登録されている結晶データを読み込む。またDで測定で用いた加速電圧を入力する(加速電圧の方は実際は解析の計算には影響しない)。
4)パターン上の大きな強度をもつ3本の菊地バンドについて,まずその中心線にマウスのドラッグで直線を引く(赤い直線が描かれる)。
5)3本の直線を描いた後にパターン上をクリックすると,3本の線の端(6箇所の座標)
のうち,最も近い座標がクリックしたポイントに移動する。これにより直線位置の微調整をすることができる。
* この3本の直線は一点で交差するものを選んではならない。逆行列が計算できず,候補に“Matrix Error”と表示される。
6)IのCalcボタンをクリックして結晶方位の候補を計算する。候補があればSのリストボックスに出力されるので,これをクリックして計算パターンを表示させ,他の菊池バンドが再現されるかを調べる。
5−3.菊地パターンの候補が無い場合に考えられる問題
1)カメラパラメータや引いた直線が不正確すぎる。−> Kの角度誤差に大きめの値を入れてCalcボタンをクリックして再計算させる。
2)選んだ菊地バンドがあまり回折強度の強いものではない。−> Jの計算に用いる菊地バンドの数を増やして再計算させる。またパターン上ではなるべく強いバンドを選ぶ。
3)菊池バンドの幅が広すぎる(回折強度が計算されていない)。−> 結晶データ入力フォームのLのボックスに小さい値を入れた後, Rのボタンで回折強度を再計算させ,本フォームのCalcボタンをクリックして再計算する。
4)他の結晶データを選ぶ(考えていた物質ではない)。
5)検出器の位置やWD(ワーキングディスタンス)を確認する。
6.カメラパラメータの設定方法
6−1.パラメータの種類
SFC6では検出器と試料(正確には試料上の電子プローブ)の位置関係等を表し,EBSD(菊池)パターン解析のために次の6つのカメラパラメータを用いる。
1.
Acquisition angle (本プログラム内ではAreaとも呼ぶこともある)
電子プローブから検出器に垂線を引き,その位置が検出器の中心に一致したと仮定した(次のX-shift, Y-shiftがともに0)ときの取り込み角度(中心からパターンの各辺までの距離に対応したの角度)(単位:degree)
2.
X-shift
プローブから検出器へ引いた垂線と,プローブから検出器中心へ引いた線との間の角度の水平成分(単位:degree)
3.
Y-shift
プローブから検出器へ引いた垂線と,プローブから検出器中心へ引いた線との間の角度の垂直成分(単位:degree)
4.
Detector area
検出器の水平方向の長さ(1画素の大きさ ´ 画素数)(単位:mm)
5.
XY-ratio
検出器の画素の垂直方向と水平方向の比(垂直方向/水平方向)
6.
Substrate normal
試料ホルダーの法線と検出器への垂線との間の角度(単位:degree)
Detector
areaは不明でも通常のパターン解析には問題ないので,わからないときは適当な正の値を入れる。XY-ratioは通常は1でよい。Substrate normalはパターン解析等に必要な値で,もし検出器が水平(プローブに垂直)であり,試料ホルダーの傾斜が70°であれば,20°となる。
これらの値はMAIN MENUのメニューバーのCamera Parametersをクリックし,現れたForm(Fig.7)のテキストボックスに入力する(パラメータの保存,読み込み方法は後述)。
Fig.7
6−2.Acquisition angle, X-shift,
Y-shiftの決定方法
これらのパラメータはEBSDパターン解析に不可欠であり,正確な値が必要である。本プログラムでは以下のように実験的にこれらの値を計算する。
1)通常のシリコン基板((001)研磨面)を{110}(へきかい面)でカットした四角い試料を可能な限り試料ホルダーの表面に平行になるように試料ホルダーに貼りつける。このとき四角の基板の各辺を水平あるいは垂直(この垂直とは試料ホルダーの面に沿った上下方向ということ)につける(10°程度までの誤差は問題なく,計算で自動修正する)。
2)実際に用いる測定条件(WD,試料回転,検出器位置)でこのシリコン基板からのEBSDパターンを取る。Fig.8のようなパターンが取れ,そこには図のように<001>,<112>,また場合によっては<111>の晶帯軸が上下方向に並んで写るはずである。
Fig.8
3)SFCプログラムのAnalyze Kikuchi pattern (three lines)で,取得したこのパターンを呼び出す(Fig.8)。
*以下の作業のためにはSubstrate normalに正しい値がFig.7のFormにすでに入力されていること。
4)Fig.8のFormのメニューバーで「camera parameters set」® 「Si(001)」をクリックする。Formの右上にSi(001)と書かれたボックスが現れ,画面がカメラパラメータの設定モードとなる(このボックスは通常は表示されず,通常のEBSDパターンの解析モードと区別できる)。
5)まずボックス内の<001>を選択し,パターン上の<001>に対応する位置をクリックする(そこに赤い十字が表示される)。もしマウスでできない微調整が必要なときはボックス内の4つのボタンで上下左右に移動させる)。
6)次にもしも<111>がパターンに写っているときはボックス内の<111>を,<111>が写っていないときは<112>を選択し,パターン上の対応する位置をクリックする(赤い十字が表示される)。
*<112>と<111>のどちらかを使えばよく,また両方を使うことはできない。また<001>が写っていないときには本ルーティンは使えない。
7)2つの赤い十字の位置でよければボックス内のCalcボタンをクリックする。すると下にあるArea(これはAcquisition angleのこと),X-shift, Y-shiftのテキストボックスのところに計算値が入る。
8)このパラメータ設定モードから抜け出すには,もう一度メニューバーの「camera parameters set」® 「Si(001)」をクリックする(Si(001)のボックスが消える)。
9)計算されたパラメータが正しいかどうか調べるためには,このパターンをSi(シリコン)でパターン解析し,1°以内の誤差で解を出せばOK。
6−3.カメラパラメータの保存,呼び出し方法
上記ルーティンにより求められた3つのパラメータ(Acquisition angle, X-shift, Y-shift)は自動的にFig.7のパラメータ設定のためのFormにも入力される。ここで他のパラメータとともにこの6つのパラメータを保存するにはこのForm上のSaveボタンをクリックし適当な名前のファイル名で保存する。また呼び出すときは,このForm上のLoadボタンで行う。尚プログラムの起動時には,以下のファイル名がデフォールトとなり,パラメータが読み込まれる。
C:\My
Documents\SFC\Camera_Parameters_New
標準的な測定条件でのカメラパラメータはこのファイルに保存し,その他の特殊な条件は他のファイル名で保存しておいてFig.8のFormを開いて読み込むようにすることが考えられる。
以上