GBSの教育ユニット・セミナー

地球生命圏科学講座は、地球生命圏の多様な研究に対応するため、対象や手法に応じて以下の4つのセミナーを教育ユニットとして開いています.同時に、GBSで取り扱う地球生命圏の統合的な理解や生命圏内での地質・鉱物・環境・生命の相互作用研究を促進するため、GBSセミナーを開講しています。

進化古生物学セミナー(遠藤・狩野・佐々木・對比地・砂村)
化石と現生生物の比較研究に基づき,古生物のあらゆる生命現象を解析して,40億年におよぶ長い時間軸での生物の進化を明らかにすることを目的としています.現在特に推進している研究分野は(1)分子古生物学,(2)古脊椎動物学,(3)比較形態学および系統分類学です.具体的に(1)では,貝殻基質タンパク質の構造と機能,貝殻の発生とらせん成長の分子機構,化石タンパク質の一次構造解析,現生種のゲノム情報をもとにした冠輪動物等の系統推定や古代ゲノムの復元など,分子生物学的手法を使って生物のさまざまな進化現象にアプローチしています.(2)では,化石を単純に記載するのではなく,鳥類を含めた現生爬虫類の筋肉系などの詳細な解剖を柱とし,脊椎動物化石の解剖学的復元など進化形態学的な研究を行っています.(3)では,古生物と現生生物の比較解剖学的研究,貝殻の微細構造の比較形態学,軟体動物の系統学的・分類学的研究を行っています.

生命圏物質化学セミナー(Biosphere material science)(小暮・高橋・鈴木・板井)
地球の表層環境には大量の水が存在し,また現在では酸化的な大気に覆われています.そして地表に露出した岩石・鉱物は,この水・大気との反応や相互作用によって,長い時間の中でこの惑星に独特な物質へと変化していきます.さらに生命圏とも言える地球表層では微生物から高等生物,さらに人間社会を含めた盛んな生命活動が営まれ,これによっても新しい物質が日々形成されています.本セミナーでは,このような地球表層特有な物質の形成・進化を物質科学的に研究し,特にその反応素過程を様々なナノスケールレベルの解析手法を用いて明らかにしていくことを目指します.具体的には,実験的手法による地球史における大気の進化プロセスの解明,粘土鉱物など非常に微細な地球表層物質の構造と表層環境における役割,生物が形成する無機物質(生体鉱物)の形成機構,微生物の関与した物質形成プロセスなどを扱います.

地圏・生命環境セミナー(鈴木・荻原・砂村)
地質時代を通じて地圏は様々な環境を提供し, 生命の誕生・進化・多様化・絶滅を駆動してきました. 地圏―生命相互作用の理解を深めることは, 生態系の成立ちを地球初期まで遡る上で重要です. 物質循環と生命現象のフロンティアである深海と地底の「今」を知り, 過去の地圏―生命相互作用を復元することを目指しています. 本セミナーでは,地質学, 鉱物学, 地球化学, 微生物学を横断して, 地圏―生命相互作用を学際的な視点で研究しています. 具体的には,陸上温泉や地下施設での調査や海底掘削・深海潜水調査等により採取した試料を研究しています. また, 地圏―生命相互作用を模擬した実験により, 地球史において重要な物質循環の素過程や反応機構の解明も行っています.

表層環境地球化学セミナー(高橋・板井)
このグループでは、地球表層の大気圏・水圏・土壌圏・岩石圏に存在する様々な元素が受ける化学的な素過程の解明に基づき,物質循環、環境・資源問題、地球史などの問題に取り組んでいます.そのために,原子・分子レベルの相互作用を明らかにする手法(X線分光法,X線顕微鏡,熱力学的定数の測定,量子化学計算など)を地球環境化学への応用も進め,様々な試料に含まれる元素がなぜその濃度や同位体比でそこに存在するかを明らかにすることで,これまで得られなかった試料の起源や挙動に関する新しい地球化学的・環境化学的情報を得ることを目指しています.扱っている問題として,「有害元素の挙動解明」,「海洋中での元素の挙動に基づく古環境解明」,「黄砂やPM2.5などのエアロゾルの化学」,「化学素過程解明に基づく有用元素濃集機構の解明(資源化学)」などがあります.

 

【沿革】

地質学・鉱物学・地理学および地球惑星物理学の4専攻の統合・再編によって、2000年4月に「地球惑星科学専攻」が設置されました。「地球生命圏科学大講座」は、地球惑星科学専攻の基幹講座のひとつで、旧地質学および鉱物学専攻に属していた地球表層の科学を研究するグループから成っています。

【目的と活動】

地球は太陽系において生命を生み育ててきたユニークな惑星です。その表層の地球生命圏では岩石圏・水圏・気圏の間で様々な相互作用が行なわれ、生命が生まれ進化し多様性が拡大してきました。地球生命圏科学大講座では、野外における地層の観察、採取試料の分析、室内実験などの第一次データを基礎として、長い時間軸を通じて地球生命圏に記録された情報を解読し、地圏物質の形成条件、地圏環境の変動メカニズム、生命の誕生と進化の要因に関する研究と教育を推進します。これらの研究を通して、地圏環境と生命の共進化メカニズムを解明するとともに、21世紀における人類社会と地球環境のあるべき関わり方についてメッセージを提示することを目指しています。

【組織と体制】

地球生命圏科学講座は、地球生命圏の多様な研究に対応するため、対象や手法に応じて5つの研究グループから構成されています。
地圏環境進化学

堆積相解析や同位体地球化学分析などを通して堆積物と地層に残された地質記録を解読し、地球史を通じての地圏環境の長期的および短期的変動要因を明らかにし、地圏環境進化-生物進化-地球内部進化の共変動機構を解明します。

地圏物質化学

地球表層を形成する物質のナノメーターレベルでの構造やその形成メカニズム、溶液と地圏物質との反応素過程をX線、電子線等を用いた物質科学的手法により明らかにします。

地球生命圏化学変動学

地球生命圏を構成する物質の化学的多様性の解析や、元素の移動・濃集・拡散機構の解明、バクテリアなどの微生物の活動・物質生産の研究などを通して、地球生命圏の化学的環境がいかにして形成され変動してきたか、またそれが生命の発展とどのように関わってきたかを明らかにします。

生命圏物質科学

生命物質と無機物質の反応過程を分子・原子レベルで探求し、原始地球における生命物質の起源および地球生命圏における生物と環境の相互作用をミクロスケールで解明します。

進化古生物学

主として化石と現生生物の比較研究に基づき、古生物のあらゆる生命現象を解析して、40億年におよぶ長い時間軸での生物の進化、生物と地圏環境の相互作用などを解明します。

東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 地球生命圏科学講座