2017年度第五回GBSセミナー(10/30実施)

[:ja]2017年度第五回のGBSセミナーは、板井 啓明准教授による着任セミナーです。

日程: 2017/10/30 Mon. 17:30-
場所: room 710@Science building #1
話題提供:板井 啓明 准教授(理学系研究科・地球惑星科学専攻・生命圏科学大講座)
題名: ヒ素と水銀の環境地球化学
要旨:本発表では、これまで取り組んできた研究と、これからの展望について紹介したい。私は2004年から研究を始め、微量元素が関わる環境科学的な研究テーマに幅広く取り組んできたが、地球化学的な色合いの強いテーマとしては①ベンガル平野におけるヒ素汚染地下水の形成機構、②琵琶湖湖底の低酸素化にともなうマンガン・ヒ素の動態変化、③水銀安定同位体比を指標とした生物地球化学的研究、が挙げられる。このうち、それぞれ地質学・生態学との接点が強い①と③のトピックについて発表する。
 地下水ヒ素汚染は、南~東南アジアを中心に世界の各地で顕在化している問題である。多くのケースで、ヒ素は自然由来と考えられており、ヒ素が地下水に溶出しやすい地質的・地球化学的特徴の把握が求められてきた。演者はバングラデシュ中東部のSonargaon地域で地形地質踏査、地下水・堆積物採取と化学分析を実施し、とくに堆積物-水間のヒ素の分配とその支配要因について詳しく調べてきた。その内容を紹介する。
 水銀は、顕著に高い揮発性を有すことや、環境中で有機化して高い生物濃縮性を示すことから、金属でありながら生元素に近い挙動を示す。主に石炭燃焼により大気中に放出され、その大気中濃度は産業革命以前と比較すると約三倍に上昇したと推定されている。これら水銀の海洋への移行や、その後のメチル化過程を詳細に明らかにすることは、魚介を介したヒトへの移行リスクを推定する上で重要である。発表では、北西太平洋のカツオ中水銀安定同位体比に関する演者の研究を紹介するとともに、地球化学的プロキシとしての水銀安定同位体比の特性についても解説する。[:]